貿易実務の内容と輸出入業務の流れを解説!業務に必要なスキルとは?
海外製の商品を使っていることがほぼ当たり前になっている現代において、貿易が特に重要であることは明らかです。
貿易の手続きには複雑なプロセスがあり、それをこなす貿易実務という業務があります。
貿易実務をこなすにあたり、貿易の取引の流れはもちろん、身に着けておくべき知識やスキルがあります。
また、より効率的に業務をこなすためには便利なソフトウェアを活用することが必須です。
本記事では、貿易実務とそのフロー、課題点について紹介します。
貿易実務にこれから携わりたい方、どんなことをする業務なのか大まかに知りたい方向けの記事です。
貿易実務とは?
貿易実務とは、「貿易に関する実務のことであり、それを遂行すること」です。
貿易には、「モノ・カネ・書類」の3つの流れがあります。
基本的にモノ、カネは一方向に1回流れますが、書類は取引交渉の開始前から取引の終了までに関係者との間で複数回書類が行き来します。
貿易取引はさまざまな契約で成り立っていることから、取り扱う書類の量も膨大です。
そのため、法的に必要な申請や許可がされているかを確認する必要があります。
これらのことから、貿易における書類は重要な役割を持ち、それを扱う貿易事務は貿易実務の中でも非常に大切な仕事です。また、貿易実務は書類仕事のみではありません。実際に港や工場に出向いて品質を確認する業務も含まれます。
貿易業務の流れ
貿易実務は基本的には「契約」「輸送」「決済」の3つの主要な流れに分けられます。
各ステップは表面上簡易的に見えますが、実際、多くの詳細な作業を含んでいます。
- 契約
● 取引先や商品の選定
輸入側では購入する商品や調達先を選び、輸出側では販売先を決定します。
● 交渉と契約締結
価格、数量、納期、支払い条件などに関して交渉し、合意に達した後、売買契約を締結します。
- 輸送
● 輸送手段の確保
輸送手段(船便、航空便など)を決定し、スケジュールを確認します。
● 貨物の搬入と通関手続き
輸出側は通常、通関手続きを行い、貨物を搬入します。契約によっては輸入側がこれを担うこともあります。
● 積み込みと輸送
貨物を積み込み、目的地へ輸送します。
- 決済
● 代金の決済
契約条件に基づいて、商品の代金を支払います。支払いのタイミングは契約により異なります。
● 貨物引き取り
支払いが完了し、商品が到着したら、貨物を引き取ります。
「契約」「輸送」「決済」の3つの主要な流れを踏まえ、輸出と輸入は以下のような流れで処理を行っています。
【輸出業務の流れ】
①取引相手との交渉
↓
② 売買契約の締結
↓
③ 信用状の確認
↓
④ 船積の準備
↓
⑤ 通関手続or業者の手配
↓
⑥ 船荷証券の入手
↓
⑦ 買取手続き
売買契約を交わしたら信用状(L/C)を確認します。
これは、決済条件がL/C決済(信用状決済)となった際に必要となるものです。
L/Cは輸入者の取引銀行が商品代金の支払いを保証することが記載された内容の書類であり、取引がスムーズに進むように設けられた仕組みです。
その後、船積や通関手続きに必要な書類を作成するなどの船積準備を経て、手続きが行われたら船積します。
その後、代金回収という流れです。
上記の流れの中で一般的に以下の書類が必要になります。
・契約書:輸出者・輸入者の双方で契約条件に合意した後に交わす書類
・信用状(L/C):銀行が輸入者の代わりに、輸出者へ支払いを確約する書類
・保険証券:保険契約の成立および貨物保険が付保されていることを証明する
・船積依頼書:輸出者から海貨業者へ渡す、船積を依頼するための書類
・輸出許可証:海貨業者から輸出者へ届けられる、税関が輸出許可を認めたことを示す書類
・船荷証券:輸出者と船会社が運送契約を結んだことをあらわす書類
・船積書類:輸出者が用意する、船便輸送貨物の財産権を示す書類群
・為替手形:輸出者が商品代金回収時に作成する、輸入者に銀行への支払いを指図する書類
さらに詳しい内容は以下に記載されています。
興味がある方はぜひご覧ください!
【図解付】輸出業務のフローとは?必要書類・取引関係者・事例なども解説!
【輸入業務の流れ】
① 契約
↓
② L/C依頼
↓
② 到着準備
↓
③ 支払い
↓
④ 荷受
契約が締結され、決済条件がL/C決済の場合は輸入者がL/Cを用意する必要があります。
L/Cの開設依頼を銀行に提出し、開設してもらいます。
輸入者は基本的に待つことが多いため、貨物到着までの間は輸入承認の届出を行ったり、保険の申し込みをしたり、さまざまな手続きを行いながら貨物を待ちます。
船積が終わったら支払いを行い、船積書類をもらいます。書類の中身を確認し、通関業務を行い、貨物を引き取るまでが輸入業務です。
上記の流れの中で一般的に以下の書類が必要になります。
・契約書:輸出者・輸入者の双方で契約条件に合意した後に交わす書類
・原産地証明書:商品の原産地を証明する書類
・輸入許可証:特定の商品の輸入に必要な許可
・通関申告書:商品の詳細や価格、原産地などを記載した書類
・B/L(船荷証券)またはAWB(航空運送状): 商品の運送契約を示す書類
・税関関連書類: 税金や手数料に関する書類
・品質証明書: 商品の品質や規格を証明するための書類 (食品や化学品の場合)
上記から書類が多いことは明確であり、貿易するために税関や銀行といった組織との書類のやり取りが必須です。
業務は数日から数週間かかることが多く、1か月ほどかかる場合もあります。
早く業務をこなすには、フローの中でも特に書類を早く正確に作成し確認することは必須です。
通関手続きと必要書類についてさらに詳しい内容は以下に記載されています。興味がある方はぜひご覧ください!
【解説】通関手続きの流れと必要書類とは?
貿易実務に必要な知識とスキル
貿易実務に携わるにあたり、一般的なビジネススキル(コミュニケーション能力等)に加えて貿易に関する専門知識、語学力、ITスキルが必要になります。
貿易に関する知識
● 貿易関連の法律・規制:輸出入に関する法律や通関手続き、貿易に関連する規制を理解することが求められます。
● 国際貿易の仕組み: 輸送手段、保険、関税など、国際取引の流れの理解が必要です。
語学力
● ビジネス英語: 契約書、メール、電話でのコミュニケーションに必須です。専門用語や業界特有の言い回しを理解できるとさらに良いです。
ITスキル
● Excel : データ管理や在庫管理、輸出入の記録を行う際に役立ちます。関数やデータ分析のスキルが求められることもあります。
● Word : 契約書や報告書の作成に使用します。
● PowerPoint : プレゼンテーションや社内報告用の資料作成に必要です。
貿易に関わる知識は貿易実務検定、語学力はTOEICや日商ビジネス英語等のスキルの習得のための基準となる資格があります。ITスキルはマイクロオフィススペシャリスト(MOS)というオフィスソフトウェアがある程度使えることを証明する資格があります。
現在、貿易ドキュメントの作成にExcelを使っている企業は多いです。
そのため、EXCEL等のオフィスソフトウェアが使えることは必須です。
近年、貿易業務のDX化が進んでおり、オフィスソフトウェアを使えるだけでは時代の流れに適応することは難しいです。
また、システム導入をした際に、ソフトウェアを使いこなすには普段から使いなれておく必要があり、支援がない状態でのそのメリットを引き出すのは簡単ではないと思います。
貿易業務のDX化についてさらに詳しい内容は以下に記載されています。
興味がある方はぜひご覧ください!
貿易業務をDX化するメリットと具体的な効果
貿易業務の課題解決に向けて必要なこと
経済産業省 貿易経済協力局 貿易振興課(2024/06/25)より以下の貿易の課題点が挙げられています。
- 未だに法令上、及び商慣習上も、紙でのみ有効な⽂書や受理可能な⼿続が残っている。
- 貿易プラットフォーム(PF)は接続するユーザーが⼀定数を越えないと効⽤実感が乏しく、PFのユーザー拡⼤が喫緊の課題。荷主企業からは、貿易PF導⼊にかかるコスト軽減、貿易PF間連携等を望む声あり。
- 貿易⼿続は商流・物流・⾦流に幅広く跨がり、関係省庁も多様であるため、共通⽬標・アクションプランを策定。ピアレビュー形式で進捗を管理し、着実に貿易⼿続のデジタル化を進めていく。
業務の効率化に向けて関係省庁や貿易PFの構築を行う企業での取り組みが進んでいますが、仕組みができ、それを実際の業務に導入するまでには年単位での時間が必要です。
また、仕組みを実際の業務を行う方々の作業項目に適用するために時間も必要です。
今まで、Excelのみを使って貿易実務を行ってきた方々が、実際の業務で問題なく使えるようになれるまでにも時間がかかることが考えられます。
そのため、システムの操作に不慣れな場合にも対応できるよう、現在行っている業務に合わせたシステム導入およびそのサポートを受けられる環境整備が必要だと思います。
まとめ
貿易実務は、貿易取引に関する実務全般を指す言葉であり、それを遂行することです。
円滑な貿易取引を実現するために貿易実務は、重要な役割を果たしています。
貿易業務を効率化することが取引全体を円滑に進めることができます。
そのために現状に合わせた環境整備を早く行うことが必要ではないでしょうか。
株式会社サンプランソフトは、30年間、一貫して貿易システムに特化してきたシステムベンダーです。貿易管理システム「TRADING」で貿易業務における悩みを解決してみませんか?
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■参考文献
https://www.digima-japan.com/knowhow/world/20672.php
https://www.kanzei.or.jp/sites/default/files/pdfs/book/nyuumon.pdf
https://www.meti.go.jp/shingikai/external_economy/digital_trade_platform/pdf/20240625_1.pdf