ERPと貿易管理システムによる最適な貿易DX化とは?

2024年現在、「某有名メーカーがシステムトラブルにより出荷停止」という旨のニュースを見た方も多いのではないでしょうか。
焦点となったERP(Enterprise Resource Planning)と呼ばれるシステムですが、本来は財務管理/人事管理/在庫管理/販売管理といった様々な分野を縦断し、スムーズな事業活動を実現するものです。

ERPは製造業や流通業をはじめとする多くの企業で導入され、有り余るほどのメリットをもたらしています。
しかし残念ながら、世にある業務プロセスのすべてを網羅できているわけではありません。

特に貿易業務においては、ERPの標準機能だけでは対処しきれない課題が存在します。
本稿では貿易領域におけるERPの課題点、ならびに貿易管理システムとのシナジーについて紹介していきます。

貿易領域におけるERPの課題

まずは先ほど「ERPの標準機能だけでは対処しきれない」と述べましたが、その場合どのようなデメリットがあるのでしょうか。

●品質のばらつき/作業量の増大
一つはシステム外の作業、つまり手作業の公認によるものです。
システム化されないことで、作業品質のばらつきやプロセス策定・人材育成への手間が大きくなるといえるでしょう。

●導入金額の増加/オペレーションのブラックボックス化
もう一つは、システムのアドオン(独自のカスタマイズ)を行う場合に伴うデメリットです。

標準パッケージにない機能やインターフェイスなどを追加するとなると、当然その分の費用が発生します。
また、会社独自のアドオンであれば操作方法も社内の使用者が知るに留まり、標準ドキュメントやインターネットなどで調べることも難しくなってしまいます。

ではこれらを踏まえて、貿易領域でERPの抱える課題を見ていきましょう。

課題1:頻繁な法規制や法改正
貿易業務の多くは、各国ごとの法規制の違いや頻繁な法改正に対応する必要があります。
ERPは一般的な業務プロセスを効率化するには優れていますが、国ごとに異なる貿易規制に対し柔軟に対応するには困難なケースが存在します。

課題2:複雑な関税・物流プロセス
輸出入に伴う関税の計算や適切な物流手配は複雑で、多くの手間と専門知識を必要とします。
ERPシステムは基本的な在庫管理や注文処理の機能を有していますが、多数国との貿易に特化した関税計算や物流手配を最適化するには限度があり、操作性も低下しがちになります。

課題3:多岐にわたる取引先や取引情報
輸出入では各プロセスにおいて外部の取引先との連携が重要でありながら、他業界と比べ幅広い範囲の情報を取り扱う必要があります。
ERPシステムの役割は企業内情報の統合・活用ですが、貿易に関連する情報は社内外にわたるため、完全な一元管理が難しい場合があります。

これらの理由から、ERPと貿易領域は相性がいいとは言えない関係にあるのです。

SAP2027年問題とは?

上述した内容を踏まえると、貿易領域のシステム化は困難なのでしょうか。

本項では、貿易DXに大きく関わるトピックとして「SAP2027年問題」を紹介していきます。

ご存じの方も多いでしょうが、SAPとはERP製品の中でトップシェアを誇る製品・企業です。そしてSAP社の主力製品である「SAP ERP6.0」のメインサポート終了を指しているのが「SAP2027年問題」です。

システムのサポート終了というと、身近なところではスマートフォンやPCが挙げられます。いずれも本体ごと買い替えるケースが多いのではないでしょうか。

そしてデータを移行し、新しいOSやインターフェイス、デバイス本体などに最初は戸惑いながら慣れていく・・・広く見れば、更新のプロセス自体はERPもスマートフォンも大差はありません。では、SAP/ERPシステムの更新はどういった点が問題となりうるのでしょうか。

一番の難点は“データ移行の難しさ”にあります。

スマートフォンは現在でこそワンタッチかつ短時間での以降が可能となりましたが、企業を支える大規模なシステムではいまだ難点なのです。データ移行時は数日間にわたってERPシステムを止める必要があり、その間関係各所の業務へ多大な影響がでること、そしてERP/SAPのデータ移行は専門の技術者でないと困難であるというのが、データ移行が難しいとされる理由です。

また日本特有の問題として、SAPへの独自アドオンが非常に多い点があります。

標準版でさえ移行に専門知識が必要な中で、企業ごとにオリジナルのアドオンを追加し複雑化・多様化させている現状が、SAP2027年問題を根深くしている最も大きな要因ともいえるのです。

そもそもERPシステム導入の基本は「システムへ合わせた業務フローの再構築」が前提といえます。

緻密に構成された標準パッケージをそのまま使用可能となるように、これまで行ってきた業務の流れを再検討するというプロセスが最も重要なのです。

しかし日本においては経営戦略・長期的改善よりも、実業務にあたる現場の声が強い傾向にありました。
つまり「いまさら自分たちのやり方を変えるより、SAPを自社業務に合わせて」という要望が大きかったのです。
かつSIer側にとってもカスタマイズによって導入件数が上がり、費用を上乗せできることから、結果としてアドオンが増えてしまったというわけです。

以上のことから、複雑化に拍車をかけたデータ移行がSAP2027年問題の核心となっています。

“貿易DXを成功させる”3つのコツ

問題について把握したところで、ここからは貿易DXについて触れていきましょう。

上述の通り、貿易業務はERPシステム単体やアドオンでのシステム化が非常に困難です。
しかし、これから紹介する”とある”プロセスに沿っていくことで、高水準の変革が可能となり得ます。

まずは下図をご覧ください。

DXの準備について、意外と簡単そうに思えた方もいるのではないでしょうか?
先進的なイメージが強いですが、実は必要なのがこの3点なのです。

以下で把握したい内容を具体的に記していきます。

1.現状の業務ツールについて
どのようなソフトやファイルを使用しているかを把握します。(ExcelやAccess、ERP、汎用品の帳票作成ソフトなど)
また、そのツールを使う上での注意点やコストについても洗い出しを行っていきます。
(マクロの有無やツール作成・使用における教育や学習に伴うコストなど)

2.自社業務の流れを把握
現時点では業務のどこでツールを使用しているのかを把握します。

3.実務上の課題を把握
ツール使用時に不便だと感じる点や、今後システム化を行いたい箇所について把握します。
この3点を整理できたところで、いよいよ貿易DXについて紹介していきます。

ERPと貿易管理システムでの連携管理

貿易DXにおいては、以下の三本柱が重要であるといえます。

  • データ活用による効率化
  • フレキシブルな貿易書類作成
  • ドキュメントの書式や運用法、品質など、内部統制の強化

ERP、Excel、Accessなどシステムは数多くある中で、本稿ではDXを実現するツールとして ERPと貿易管理システムとの連携 が最もマッチしていると考えます。

●「2.ERPとAccess/Excelで運用」の弱点
まずAccessやExcelはデータ連携が得意ではありません。
よって貿易業務で頻度の高い書類の転記時などにおいて誤記や工数の発生が懸念されます。

またレイアウトの自由度が高いことから、逆にデータの破損リスクや属人化の危険性は高いと言えるでしょう。

●「3.ERPをカスタマイズ」の弱点
次にERP単体での貿易業務についてです。
内部統制は申し分ないのですが、先述のように貿易との相性はあまり良いとは言えず、単体で運用を考える場合は必然的に多数かつ独自のアドオンが必要となります。

結果として導入時の工数や開発費が高額となり、かつSAP2027年問題のようなサポート・ショックに対して常に考慮する必要も出てきます。

●「1.ERPと貿易システムを連携」のメリット
これらを踏まえ、ERPと貿易管理システムの連携使用に触れていきましょう。
まず効率化という点では、ERP-貿易管理システム間でデータを連携することで飛躍的にアップすると考えます。ソフトによっては書類の自動作成なども可能であり、Excelで紹介したような手入力での転記ミスも防止できます。

そして専用ソフトの強みである、貿易業務への対応範囲は随一です。一般的なソフトでは自作するしかない業界特有の書類についても、標準搭載しているケースが大半です。フォーマットを一から作る必要もなく、社内で統一した運用が可能となるでしょう。

そして最後は貿易管理システムならではの機能について、実際の画面も交えて紹介していきます。

貿易管理システムの導入メリットやオススメ機能を紹介!

まずはデータ活用についてです。

前述のようにシームレスな連携が可能なことから、ERPのデータを用いたスムーズなドキュメント作成・データ活用が実現可能となります。

次は書類作成での機能です。 図ではTRADINGシリーズというソフトを例に紹介しています。
テキストボックスに一つづつ項目を入力するだけでなく、ソフトによってはこういったグラフィカルなインターフェイスを設けているものも存在します。

そして内部統制においても、正確なデータ連携と貿易専用ソフトでの合わせ技にて強固となることが期待できます。
コーポレートガバナンスが重要視される昨今において、非常に有用な特徴といえるでしょう。

まとめ

ERPと貿易管理システムによるDXについて紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
SAP、ERPを使用されている企業において避けられないサポート切れ問題、安心してデータ移行を行う為のシステム検討は、貿易DXへつながるというお話でした。

システムの切替えは費用や時間がかかるイメージが多く、企業のご担当者様も悩まれることが多いかと思います。
そう遠くない将来に向け、ご準備を始めてはいかがでしょうか。
この記事を書いている株式会社サンプランソフトは、システム化のお悩みから導入・サポートまで一貫して行う、貿易業界に特化したシステムベンダーです。

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