AEO制度とは?メリット・デメリット・具体例を用いてわかりやすく解説!
税関の手続きが複雑で困っていませんか?
手続きのスピードアップすることができるAEO制度のメリットやデメリット、認定業者となるためのポイントまで分かりやすく具体的に解説いたします。
目次
AEO制度とは?
今回は、AEO制度についてわかりやすく解説いたします。
2001年の米国で発生した同時多発テロ以来、国際物流の動向においては、安全性と効率性の両立が常に重要視されています。
このような流れに応じて、世界税関機構(WCO)はセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備された事業者を税関にて認定、税関手続の簡素化などのメリットを提供する「AEO(Authorized Economic Operator)制度」を導入するなど、国際的な基準の枠組みを2005年に採択しました。
2023年時点では、日本国内での認定事業者数は700名ほどとなっています。
(図:税関HPの資料より作成
https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/aeo_transition_j.pdf)
税関では、以下の2点を満たした事業者について承認・認定を行うとしています。
●貨物のセキュリティ基準を満たしている
●コンプライアンス体制が整備されている
AEO制度導入による税関の目的は?
上記にてAEO制度の承認を受けた事業者には、税関手続へのメリットがあるとお伝えしました。各国の税関がこのような優遇を行う目的は、大きく分けて2点あります。
1)物流の円滑化による、検査リソースの集約
制度導入当時はテロ組織による武器や危険物、および組織の資金源となる密輸を防ぐことが急務であるものの、昨今のグローバル化により急速な物流量の増加もあり、「税関での検査を厳格化」で片づけるには難しい状況でした。
また、単純に税関職員を増員させるというのも中長期的な対策にしかなり得ません。対テロ施策においては高い検査精度が必要かつ、テロ組織による買収工作を避けられるレベルの人材が求められることから、新人職員の大量雇用は不適と考えられたためです。
そこで考えられたのが、AEO制度でした。基準を満たした事業者の認定・税関手続の簡素化により検査対象の総数を減らすことが、第一の目的と言えます。
2) 密輸リスクに対するセキュリティの確保
二つ目はセキュリティに関する目的です。税関の至上命令といえば拳銃や麻薬などの違法物品、およびワシントン条約などでの規制対象などを水際で防ぐことにあります。
もう一つ重要な点が、輸出入者の無自覚なテロ組織への供与防止です。ニュースなどで「旅行中に荷物を運んでくれと頼まれた」「知らない荷物がカバンに入っていた」などの話題を見たことがある方も多いかと思います。
これに対し、AEO制度の導入により検査対象の選択と集中を行うことが可能となります。認証を受けた事業者の検査工数は最小限とし、その分のリソースをリスクの高い一見の事業者に割くというわけです。
以上が税関におけるAEO制度導入の目的です。
事業者へのAEO制度のメリット・デメリット
ここからは、事業者側におけるAEO制度のメリット・デメリットについて詳細まで説明していきます。
事業者は輸出者/輸入者/運送者…とさまざまな立場がありますが、概要としては次のようになっています。
●事業者側のメリット
税関手続の簡素化/手続のスピードアップ
●事業者側のデメリット
業務量・人件費の増加/違反時の罰則
次に、事業者の業種ごとに見ていきましょう。
AEO制度は事業者の業種で分かれた、6つの制度を内包しています。
●AEO輸出者
AEO制度における「特例輸出者制度」という枠組みが適用されます。
●AEO輸入者
AEO制度における「特例輸入者制度」という枠組みが適用されます。
●AEO保税承認者
AEO制度における「特定保税承認者制度」という枠組みが適用されます。
●AEO通関業者
AEO制度における「認定通関業者制度」という枠組みが適用されます。
●AEO保税運送者
AEO制度における「特定保税運送者制度」という枠組みが適用されます。
●AEO製造者
AEO制度における「認定製造者制度」という枠組みが適用されます。
●デメリットについて
デメリットについては、いずれも類似しています。初めに「業務量・人件費の増加/違反時の罰則」と表しましたが、具体的には下記の通りです。
1)業務量・人件費の増加
AEO制度は多くの作業が自己管理に委ねられています。貨物管理に関連する書類をミスなく作成し、適切に保管するためには時間と人件費の増加は見込まれると言えるでしょう。
2)違反時の罰則
一般の輸出入業者、通関業者、運送業者、および製造業者などと比較してメリットがある一方、法令違反や不適切な貨物管理などが露呈した場合には罰金などの罰則を受ける可能性があります。
認定事業者となるためのポイント
メリットとデメリットが分かったところで、次はAEO制度認定を受けるためのポイントについて解説していきます。
大きく分けると、次の2点です。
1)物理的/人的/情報セキュリティの確保
2)コンプライアンス遵守可能な体制か
まず一つ目のセキュリティについて紹介します。
1-1)物理的セキュリティ
外国貨物を扱う場所であるため、不正侵入者を防ぐために入退場の動線を確立することが求められます。
また改造コンテナを利用させられ、規制物資の輸出入に関与してしまうリスクを排除するため、コンテナ管理の方法についても整備・確立が必要とされています。
1-2)情報セキュリティ
流通上のリスクを低減するため、社内での不正を抑制し、外部からの不正侵入者を見つけやすい環境の整備、および業務委託先を管理・監督する仕組みの整備を求められます。
1-3)人的セキュリティ
ネットワークへの不正アクセス防止、および顧客情報や出荷情報の不正利用を防止する仕組みの整備を求められます。
次に、二つ目のコンプライアンス順守体制についてです。こちらは下記5つの認定要件が定められています。
●法令違反の履歴が一定期間ないこと
●暴力団員などとの関与が皆無であること
●業務を妥当に遂行する能力を保持していること
●社内にて法令遵守規則を明確に規定していること
●NACCSを利用した業務が可能であること
これらの要件を満たすことで、AEO事業者の承認資格があるといえるでしょう。
【まとめ】AEO制度とは?具体例を用いてわかりやすく解説!
AEO制度とは?
→税関による事業者の認定制度
AEO制度導入による税関の目的は?
1)リスクの高い事業者への、検査リソースの集中
2)密輸リスクに対するセキュリティの確保
事業者へのAEO制度のメリット・デメリット
●メリット:税関手続の簡素化/手続のスピードアップ
●デメリット:業務量・人件費の増加/違反時の罰則
認定事業者となるためのポイント
1)物理的/人的/情報セキュリティの確保
2)コンプライアンス遵守可能な体制か
今回はAEO制度の概要に述べさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
国際物流におけるセキュリティやリソース確保・環境整備の仕組みづくりは、昨今ではAEO事業者以外にも求められているといえるでしょう。
特に環境整備においては、エクセルファイルを複雑化しすぎた結果、特定の担当者しか書類作成が難しい状況とといったお話をよく耳にします。
この記事を書いている株式会社サンプランソフトは、30年間、一貫して貿易システムに特化してきたシステムベンダーです。
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