【図解付】輸出業務のフローとは?必要書類・取引関係者・事例なども解説!

【図解付】輸出業務のフローとは?必要書類・取引関係者・事例なども解説!

輸出とは、自国・自社の商品を海外へ販売することだ、という認識はごく一般的といえるでしょう。
しかし、言葉の意味は把握していても、具体的にどのような流れで行われ、どういった企業や機関、団体とのやりとりが必要なのか、正しく説明できる方は多くおりません。

特に、国内取引とは言語・通貨・商慣習などさまざまな要素が異なることから、輸出業務における関係者は多岐に渡ります。
全体の流れ・進捗状況を正確に把握することが、スムーズな取引に繋がることでしょう。

本記事では、輸出業務全体のフローや必要な書類、輸出におけるNG事例をご紹介いたします。

輸出業務全体の流れ

輸出に限らず、貿易実務では商品や代金、書類・情報といった複数の要素が同時並行で動いています。
まずは、全体の流れを紹介いたします。

輸出業務全体の流れ
輸出業務内容

輸出者と輸入者のやりとりにとどまらず、税関や通関業者、船会社などと各種書類や手続きを交わしていることが分かるかと思います。

なお、輸出者に絞ると、このようなフローになります。

輸出者の業務フロー例

①取引契約相手との交渉
輸入者と対面、もしくはメールなどで希望条件をすり合わせます。
価格や納期といった一般的なところから、決済条件、国際商業会議所が制定したルール「インコタームズ」はどれを採択するかといった内容を取り決めます。

②売買契約の締結
輸入者と合意した交渉内容を基に、契約書を作成します。
ケースバイケースで輸入者が作成する場合もあります。なお、書類については、後ほどご紹介します。

③信用状の確認決済条件が信用状決済の場合
輸出者の取引する銀行から、輸入者へ送られてきます。
後述する船積書類と記載内容が異なると、銀行が買い取ってくれない=代金が支払われないので、入念な確認が必要になります。
記載内容は②の内容と異なっていないか、銀行が支払を確約する文言はあるかなどのチェックを行います。

④船積の準備
②の契約で輸出予定日をきめた後、輸出者が海貨業者へ貨物の船積を依頼します。
船積書類を必要としますので、依頼までに準備が必要です。

⑤通関手続きor業者の手配
輸出者自身、あるいは通関を専門に行う業者への委託にて、税関への輸出申告に必要な書類を作成し、通関手続きを行います。
この際、④で準備した船積書類を基に書類を作成します。

⑥船荷証券の入手
船荷証券は船会社から輸出者へ発行されます。
流れとしては、通関手続きによる輸出の許可→船会社が船積み完了→証券発行となります。

⑦買取手続
輸出者は銀行へ、信用状に記載通りの書類(船荷証券や船積書類)と為替手形を揃えたうえで、買取を依頼します。
銀行が信用状と書類群の内容一致を確認し次第、輸出者へ商品代金が支払われます。
最後に輸入者への輸出商品の到着をもって、輸出業務は完了となります。

もちろんこの内容が輸出の全てというわけではありませんが、貨物の流れ、やり取りされる書類の流れといった大きなフローを把握することが大切です。

輸出取引における関係者

輸出の大きな流れを把握いただいたところで、改めて取引における関係者のおさらいをします。

輸出業者
自社の生産物を直接海外に販売する生産業者や、国内の製造業者や生産者から購入した製品を、外国市場で販売する商社などがあります。

輸入業者
輸出と異なる点は、売買目的だけではないところです。
海外から購入した物を加工して販売する製造業者や、購入した物を別の国内に企業に売る商社などがあります。

もちろん海外から仕入れて国内でそのまま販売する業者もいます。
一般の人に売る場合は小売り・流通業者などと呼ばれます。

銀行
輸出入においても一般的な銀行のイメージと同様、販売者と購入者の間に介在し、資金の融資や立て替えを行います。

通関業者
通関手続きの専門家であり、輸出入者の通関処理を代行します。
税関に対して輸出又は輸入の申告、関税の納付、不服申立て等を行います。

なお、財務大臣の許可を受けなければ通関業は営めません。

海貨業者
正式名称を「海運貨物取扱業者」といい、港湾区域のような保税地域(輸出入時に貨物を留め置く場所/立ち入り制限あり)で輸入者・輸出者の代わりに貨物を取扱います。
港湾海運事業法に基づき、貨物の船積や引取りの手続き、運送などを行います。

なお、実務上では古い呼び名である乙仲(おつなか)や、国際輸送業務のコーディネーターであるフォワーダーと同義で用いられる場合があるようです。

船会社
運輸を行う業者のなかでも、貨物船やタンカーなどを扱う海運業者を指します。

税関
国内各地の港や空港において書類を審査し、麻薬や拳銃など法律で輸入が制限されているものがないかの検査を実施、関税(商品の輸出入に際して課される税金)や消費税などの税金を課します。

保険業者
上の図にはいませんが、商品が運送中に事故や災害に巻き込まれて到着しない場合は海上保険、取引相手の破産や相手国の政変など、代金が支払われない状況は信用保険、といった具合に金銭的な損害への保険商品を取扱う業者です。

輸出業務に必要な書類

輸出業務に必要な書類

ここからは、輸入者の立場で取り扱う書類について紹介していきます。

契約書
輸出者・輸入者の双方で契約条件に合意した後に交わす書類です。
ここでいう契約条件は貿易条件とも呼ばれ、売買する当事者間での費用負担、貨物の危険負担の範囲を条件付けしたものをいいます。

インコタームズに基づいての決定が一般的とされます。
契約書は、輸出者と輸入者のどちらが作成するかによって呼称が変化します。

  • 輸出者が作成…注文請書(Sales Note) または 販売契約書(Sales Contract)など
  • 輸入者が作成…発注書(Purchase Order) または 注文契約書(Purchase Contract)など

表面には商品の注文内容やインコタームズ、裏面には一般取引条件(印刷条項)と呼ばれる汎用の条件を記載することが一般的とされます。

信用状
銀行が輸入者の代わりに、輸出者へ支払いを確約する書類です。
具体的には、輸入者の要望に基づいてその国の銀行が発行する、輸出業者に対しての支払いを約束した書類です。
L/C( = Letter of Credit)とも呼ばれます。

銀行が仲介役になることで、前払いにおける商品を受け取れないリスクや、後払いでの代金未払いのリスクが無くなることから、輸出入取引では一般的に用いられます。
デメリットとしては銀行に対して支払うコストや、輸出地での通知や輸入地の買取といった処理が煩雑な点があります。

保険証券
保険会社が加入者(輸出者/輸入者)へ発行し、保険契約の成立および貨物保険が付保されていることを証明します。
保険金請求の必要がある場合に、加入者が保険会社へ提出する流れになっており、I/P( = Insurance Policy)とも呼ばれます。

なお保険を手配している場合は、決済時(船積書類と合わせて)や、輸入地の税関での提出を求められます。

船積依頼書
輸出者から海貨業者へ渡す、船積を依頼するための書類です。
船荷証券に記載する内容の基になり、S/I( = Shipping Instruction)とも呼ばれます。

輸出許可書
海貨業者から輸出者へ届けられる、税関が輸出許可を認めたことを示す書類です。
海貨業者が税関で輸出申告を行い、内容に問題がなければ税関によって交付されます。

船荷証券
輸出者と船会社が運送契約を結んだことをあらわす書類です。
船会社が貨物を受け取ったタイミングで発行され、B/L( = Bill of Lading)とも呼ばれます。

この証券を持つ人が、貨物の引き渡しを受ける権利の所有者となります。

船積書類
輸出者が用意する、船便輸送貨物の財産権を示す書類群です。

為替手形
輸出者が商品代金回収時に作成する、輸入者に銀行への支払いを指図する書類です。
一般的に輸出地の銀行(L/C取引では買取銀行)が用意したフォームを用いられ、Bill of Exchangeとも呼ばれます。

信用状の内容ベースに作られますが、誤字があれば銀行から買取拒否を受けるため、誤字脱字のない確実な記述が必要になります。

輸出業務における、NG事例

輸出業務の流れや関係者、書類について把握いただいたところで、ここからは「輸出時にやってはいけない」という例を紹介していきます。

輸出規制品について
日本政府では、輸出を規制される貨物や技術を定めています。
これに反すると外国為替及び外国貿易法違反として処分されてしまうので、経済産業大臣の許可を得ていない規制品の輸出を行ってはいけません。

一例としては、大量破壊兵器関連です。兵器そのものだけではなく、部品や製造設備などの多くは規制対象となります。

輸出規制されている企業・組織
品物だけではなく、輸出を規制されている取引相手も存在します。
一例として、経済産業省発行の「外国ユーザーリスト」と呼ばれる書類に掲載されており、大量破壊兵器や生物兵器などの開発・製造が懸念される企業・組織がリストアップされています。

記載ユーザーに対しての輸出は、お菓子やぬいぐるみのような明らかに兵器開発と無関係のもの以外は、輸出許可申請が必要となりますので注意が必要です。

【まとめ】輸出業務のフローとは?必要書類・取引関係者・事例なども解説!

輸出における業務フロー、関係者、書類、NG例と辿りましたが、いかがだったでしょうか。
どの要素についても、法や規制、契約が複雑に嚙み合っているという印象を受ける方は少なくありません。

特に、書類に関しては、一文字の誤字で商品代金が受け取れない、といった場合も起こりえます。
しかし、国際物流の現場では、WordやExcelなどへの手入力、コピー&ペーストでの書類転記にて運用されているケースはまだまだ多いとのことです。

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